約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
「行っちゃったね」
「うん。
行っちゃった……舞。
私、山南さんだったらどうするだろうって。
心の中でずっと、山南さんと話しながら、
近藤さんたちとの間の絆を、歯車が外れようとしてるなら、取り持ちたいって思った。
でも……私の入る幕なんて何処にもないよ。
仲間割れなんかじゃない。
二人の心は、近藤さんと一緒に合った。
話し合いの結果、今、この瞬間の道は違えてしまったけど、
遠い未来で見る夢は同じなんだって思っちゃった」
そう言うと花桜も部屋から出る。
この家の主にお礼を告げた後、
外へと歩き出した。
冷たい風が頬を撫でていく。
長い髪を揺らしながら、
私の前を歩いていた花桜は立ち止まって夜空を見上げた。
花桜は目を閉じて何かを祈っているみたいだった。
「花桜、敬里は?」
「今は医学所で休んでる。
ホント、あの馬鹿。
風邪、治りきらなくて悪化させてさ。
元気になったらとっちめてやんないと」
花桜はそう言いながら、私に笑いかけた。
「そうだねー。
でもさぁー、ある意味今、医学所に居て貰って良かったんじゃない?
ほらっ、私たちが知る沖田総司は、
この頃、結核病で動けないはずでしょ。
敬里が沖田総司として動き続けてたら、歴史が歪められちゃう」
「それもそうだねー。
肺結核で亡くなったはずの沖田さんが、
敬里が生きてることによって鳥羽伏見の戦いの生存者なんて未来、
変えていいはずないよね。
うん。よしっ、沖田さんには悪いけど、ちゃんと死んでもらわないとね。
歴史通り」
私の言葉に、花桜は物騒な言葉を続けた。
この先のどのタイミングで、敬里を沖田総司の大役から解放するか……。
そんなだいそれた計画を企てながら、
私たちの夜は更けていった。
今の花桜には伝えることはないけれど、
「会津で会おう」
その言葉が、新選組十番隊組長・原田左之助隊士との最後の別れになることを……。
遠い、舞ちゃんの記憶で知る、その先の未来。
原田さんは、靖兵隊として会津に向かう途中、
用事があると行徳宿で隊を離れるものの、
官軍に囲まれて追いつくがかなわず、彰義隊の人たちと上野の戦に参加し、
戦死したと言う噂が、会津へも届いたということだけ。
歴史は巡り続け、時代は益々混迷していく。
私も頑張らなきゃ。
私自身のエゴから巻き込まれた、
大切な友を未来へ帰らせるまで。