ひとり、夏色
「東京では通って
なかったの?高校」
「通信制行ってた」
「なんで?」
「仕事、忙しかったし」
「へえ」
しゃべっている時、
千早は一度も私の
目をみようとは
しなかった。
真っ黒で大きな瞳は
どこをみつめているのか。
「それにしても、
奇麗だね。神様みたい」
私がそう言ったとき
はじめて彼は私の
目をちゃんとみた。
「君は、夏緒って
いうんだっけ」
同じ人間とは思えない
程美しい千早に
みつめられて、
息が止まるようだった。
「うん」
「夏緒は、
ワイドショー好きの
ババアみたいだな」
そう言って、
ニコリ、と元アイドルは
ほほ笑んだ。
そこで私は感じた。
こいつ、嫌い。