柴犬男子と黒猫女子
1.

4月


4月6日。
アラームで目を覚ますと、窓の外から鳥の声が聞こえてきた。
「よっ」
がばっと勢いよく起き上がり、カーテンを開けた。
朝の光が部屋を照らす。
ハンガーにかかった新しい制服が、光を受けて輝いている。と、
「香月ー、起きてる?」
突然のノックの音と共に聞こえた声に、慌てて返事をする。
「起きてる!どうしたの?」
「いや、寝坊してないかと思って。起きてるならいいや、母さんがご飯だって」
「ああ、ありがと」
スリッパの音が遠ざかっていくのを確認して、細く長く息を吐き出す。
さっきの声は、母さんの再婚相手の子供、柴田優だ。母さんが再婚した一ヵ月前から、一緒に住んでいる。
でも全然慣れないんだ。今まで、母さんはろくに家に帰ってこなかったし、1人でいることが当たり前になっていて、今さら常に誰かが家にいる生活に変わってもすぐになんて適応できない。
母さんは散々私を振り回してきた罪悪感でもあるのか、ゆっくり少しずつ慣れればいいとか親みたいな事言ってきたけど、私は母さんを親だなんて思っていない。ただ金を出してくれるだけ、言ってみればパトロンの様なもの。
…一年のはじめから嫌な事を考えてしまった。せっかくの晴れの日なんだし、こんな時くらい、楽しんでもいいよね。
「…よし!」
頭を思いっきり振って嫌な事を吹き飛ばし、勢いよくパジャマを脱ぎ捨てた。
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