私の上司はご近所さん
息を乱しながら駅のホームにたどり着く。次の電車が到着するのは十分後。
メロンパンが食べられなくなったのも、タイミングよく電車に乗れないのも、すべて翔ちゃんのせい。今日はイベントなのに、最悪な日になりそうだ。
まだ怒りが治まらない中、ホームのベンチにドスンと腰を下ろした。
朝、会ったときは普通に挨拶したし、パンをくれるほど機嫌がよかった。それなのに部長が登場した途端、急に不機嫌になったのはどうして?
「はぁ」
大きなため息をついて翔ちゃんのことを考える。すると不意に「園田さん」と名前を呼ばれた。
「部長……」
顔を上げた私の視界に映り込むのは、穏やかに微笑む部長の姿。
「はい、これ」
部長は私の膝の上に白い袋を置くと、隣に腰を下ろす。ほのかに漂う甘い香りだけで、白い袋の中にメロンパンが入っているのがわかった。翔ちゃんから新しいメロンパンを私に渡すように頼まれたのだろう。
「部長、朝からすみませんでした」
私たちのゴタゴタに巻き込んでしまったことを部長に謝る。
「ケンカするほど仲がいい、だな」
瞳を細めた部長が、クスクスと笑い出した。