私の上司はご近所さん
イベントは大きな問題もなくスムーズに進行していった。夏ショコラの売り上げも上々で、試食品の評判もいいようだ。
イベントを開催したにもかかわらず、来客数や取材申し込みが少なかったり、今日の販売実績が振るわなかったらどうしようと、実は内心ドキドキしていた。けれど、そんな心配は必要なかったみたい。
ホッと胸をなで下ろしながら、お昼休憩を取るために持ち場を離れる。すると爽やかな笑みを絶やさずにテレビやラジオ、新聞社などの大手企業の取材対応をしている部長の姿が目に入った。
部長の笑顔を初めて見たわけじゃないのに、何故か視線を逸らすことができない。もっと、ずっと、部長のことを見つめていたいという感情が湧き上がって止まらない。
自分の気持ちがわからずに答えを求めるように胸に手をあててみると、ドキドキと心拍数が上がっていることに気づいた。
私、どうしたんだろう……。
軽くパニックを起しそうになっていると、背後から肩をポンと叩かれた。
「園田さん」
「あっ、山崎さん。今日はお越しくださってありがとうございます」
振り返った先にいたのは、星出版の山崎さん。気持ちを仕事モードに切り替えると頭を下げる。
「こちらこそ、ありがとうございました。イベントも大盛況ですね」
「はい。おかげさまで」