私の上司はご近所さん
ふたりきりの慰労会
思いがけない出来事があったものの、イベントは無事に終了した。帰り支度を整えるために広報部に戻ると、オフィスにはすでに部長がいた。
「お疲れさま」
「お、お疲れさまです」
挨拶がぎこちなくなってしまったのは、部長を意識してしまったから。声をかけられてうれしいのに、目を合わすのが恥ずかしい。
「園田さんは慰労会に参加するのか?」
この後、夏ショコラに関わった各部署の社員たちが集まり、近くの居酒屋で慰労会が開催される。
「いいえ。私は真っ直ぐ帰ります」
日中、慰労会の幹事から出欠席を尋ねられた。昨日まで毎日のように残業していたし、今日は一日中立ちっぱなしで取材対応をした。心は充実感で満たされているものの、体はクタクタだ。
慰労会に出席してアルコールを飲んだら、悪酔いしてしまうかもしれない。
そう思った私は結局、慰労会は欠席すると幹事に伝えた。
「そうか。それは残念だ」
うつむきがちな私の耳に、信じられない部長の言葉が届く。
えっ? 部長は私が慰労会に出席しないことを寂しく感じているの?
部長の言葉を自分に都合のいいように解釈しすぎかな、と思いつつも期待に胸が膨らんでいった。
部長が今、どんな顔をしているのか気になって仕方ない。
そっと視線を上げて様子をうかがってみると、そこにはデスクに頬杖をついて軽く微笑んでいる部長の姿があった。