私の上司はご近所さん
「イベント開催まで大変だったろ? これはがんばった園田さんに俺からのご褒美だ」
入社三年目で任された大きな仕事を無事にやり遂げられたのは、夏ショコラに関わったすべての人の助けがあったから。それでも私を労ってくれる部長の気遣いは、とてもうれしかった。
「ありがとうございます」
このオレンジジュースにそんな深い意味があったことに驚きつつ、再びお礼を告げる。そして私がオレンジジュースのパックにストローを差し、部長がブラックコーヒーのプルタブをプシュッと開けると、コチンとそれを合わせた。
ふたりで「乾杯」と声をあげる。
ストローでオレンジジュースを吸い上げながら見つめるのは、斜め上を向いてブラックコーヒーを飲む部長の姿。ゆっくりと上下する喉仏から、目が離せなくなってしまう。
「ん? どうした?」
「い、いえ。なんでもありません」
色気を感じさせる喉仏に見惚れていました、と白状したら、きっと変態扱いされてしまう。
慌てて首を左右に振ってストローに口をつけると、部長が不意に腰を屈めた。
「少し焼けたか?」
「えっ? 嘘っ?」
「頬が赤くなっている」
「えー、本当ですか?」
今日は一日中、天気がよかった。紫外線をカットする下地とファンデーションを塗ったにもかかわらず、日に焼けてしまうとはショックだ。