私の上司はご近所さん
Story・3
飲みすぎた歓送迎会
一日の仕事が終わり、迎えた午後七時。
居酒屋の二階の座敷部屋に「乾杯」という音頭が響き渡る。あちらこちらでビールが注がれたグラスがぶつかり合い、広報部長の歓送迎会が始まった。泡立ったビールをひと口飲むと、隣に座っている中原主任に声をかけられた。
「園田さん、お疲れさま」
「はい。主任もお疲れさまです」
甘すぎないフローラルな香りと、口もとを華やかに彩る赤い口紅。大人の女性の色気を醸し出す主任と、改めてグラスをカチンと合わせる。
「ねえ、園田さん。星出版の山崎さんとデートするの?」
「えっ?」
「ほら、朝の電話。『デート!?』って大きな声出していたじゃない」
「あ、あれは山崎さんにからかわれただけです」
いきなり山崎さんの話題を持ち出され、うろたえてしまう。
「あら、そうなの。残念だったわね」
「えっ? あ、はい」
慌てる私の様子がおかしかったのか、主任がフフッと笑った。
「星出版の山崎さんってかっこいいわよね」
「そうですね」
「まあ、彼には負けるけど」
「……彼?」
えっ? 『彼』って、いったい誰?
疑問に思いながら主任の様子をうかがっていると、彼女の視線が上座席に移った。そこにいるのは、本日の主役である部長だ。