私の上司はご近所さん

「さて、そろそろ五分経ったな。行こうか」

「はい」

部長とともに書庫に戻るとドアを開ける。

部署ごとに配置されている棚には書類のファイルがズラリと並んでいるため、入り口付近にいる私たちには奥の様子をうかがい知ることはできない。

「俺が中の様子を見てくるから、園田さんはここにいるように」

「はい。わかりました」

コクリとうなずくと、部長が書庫の奥に向かった。常に私をリードしてくれる部長を心強く感じていると、すぐに彼が戻ってくる。

「退散したようだ。さあ、始めようか」

「はい」

部長はワイシャツの袖をまくり上げると、台車から書類の束を手に取った。

いつもは高い棚に書類を保管する際は脚立を使う。重い書類を抱えて脚立を上る作業は意外と怖い。でも今日は部長がその作業を引き受けてくれた。

部長の腕に浮き出た血管と、ワイシャツの袖をまくった姿に男を感じてしまい、目が離せない。そして書類の束を片手で軽々と持ち、ひょいと棚に置く姿は頼りがいがあってとても素敵だ。

うっとりと部長を見つめていると、パチリと視線が合った。

「ん? どうした?」

「い、いいえ。なんでもないです。あっ!」

部長に見惚れていたことを誤魔化すように、慌てて台車から書類を取ろうと手を伸ばす。けれど勢いあまって書類の束を倒してしまった。

「すみません!」

余計な仕事を増やしてしまった!

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