私の上司はご近所さん
Story・10
恋は理屈じゃない
梅雨の晴れ間となった七月上旬の土曜日。
「乾杯!」
東京の夜景が見渡せるビアガーデンで、結衣と一緒に声をあげると中ジョッキをぶつけ合う。
今日は五月に開催された最悪だった合コンの憂さ晴らしと、夏ショコラのイベントの慰労を兼ねた飲み会。本当ならもっと早く飲みに行く予定だった。それなのに今日になってしまったのは、結衣に彼氏ができたから。なんでも営業部の新人の彼に『ひと目惚れしました。つき合ってください!』とストレートに告白されたというのだ。
「どう? 彼氏とはラブラブ?」
「うん。ラブラブだよ。純くん、年下なのにかっこいいし、おもしろいし、優しいし、キスも上手だし、その先も……」
「も、もう、わかったからっ! ストップ!」
彼氏とのデートを最優先する結衣にチクリと嫌味を言ってみたけれど、デレデレとノロケ返されてしまった。このまま放っておいたら、私が赤面してしまうような内容になってしまう。慌てて結衣の話を止めた。
「百花もいい加減、翔ちゃんとくっついちゃえばいいのに」
結衣は生ビールに口をつけながら、フフフッと笑う。
結衣とは社員食堂で毎日のようにランチしているものの、部長を好きになってしまったことはまだ打ち明けていない。