私の上司はご近所さん

夏祭りのお誘い


鬱陶しい梅雨がようやく明けた七月下旬の月曜日。今日も定時に仕事が終わり、会社を後にする。午後六時を過ぎたというのに、外はまだ明るく気温も高い。少ししか歩いていないのに、背中にじんわりと汗が滲み出した。

あ、暑い……。

東京の夏は湿度が高くて蒸し暑い。札幌支社から異動してきた部長は、この暑さにうんざりしているだろうな。

ふとしたときにも部長のことを考えてしまう自分にあきれていると、背後から声をかけられた。

「園田さん!」

「あ、佐藤さん。お疲れさま」

私に声をかけてきたのは、後輩の佐藤さん。彼女と並んで駅に向かう。

「お疲れさまです。外はチョコレートも溶けるような暑さなのに、バレンタインとか言われても、なんだかな~って感じですよね」

「そうだね」

今日の午後、バレンタイン商戦のミーティングがあった。部長から発売商品と売り上げ目標額、PRのスケジュールなどが発表されたばかりだ。

佐藤さんの言う通り、真夏日が続く今の季節とは正反対であるバレンタイン時期のスケジュールを聞かされても、いまいちピンとこないというのが本音だ。

「園田さんは夏休み、どこかへ行く予定あるんですか?」

「ううん。特になにもないんだ」

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