私の上司はご近所さん
四日前、私はジュジュ苑の焼肉をタダで食べられるという甘い誘惑に負けて、結衣を部長に紹介すると約束してしまった。けれど、この状況で『同期を紹介したいのですが』と部長に話しかけるのは難しそうだ。
結衣、ライバルが多すぎるよ……。
ため息交じりにハーレム状態な部長を遠巻きに眺めていると、主任が声をあげた。
「そろそろ私も参戦するか」
「……?」
主任は素早く立ち上がると、瓶ビールを片手に部長のもとに向かう。これからなにが起きるのか気になった私は、主任の後をソロソロとついて行った。
「はいはい。どいて、どいて」
主任は群がる女子社員たちを押しのけると、部長の隣に座りビール瓶を差し出す。
「藤岡くん、どうぞ」
「中原。ありがとう」
部長が手にしたグラスに、主任がビールをなみなみと注ぐ。
「いいえ、いいえ。それで藤岡くん、あの彼女とはまだつき合っているの?」
「は?」
「やだな。とぼけなくてもいいじゃない」
主任はビール瓶をテーブルに置くと、部長の脇腹を肘でドンと小突いた。
「つき合い長いよね? 結婚するの?」
黙り込む部長を気にすることなく、主任は次々に質問を投げかける。