私の上司はご近所さん
「開けてみてもいいですか?」
「どうぞ」
黄色の紙袋のテープを丁寧に剥がすと中身を取り出す。
「うわぁ! かわいい!」
中から出てきたのはタッセルチャーム。鮮やかなコーラルピンク色が大人っぽくもあり、かわいらしくもある。
「気に入ってくれたかな?」
「もちろんです! 部長、ありがとうございます!」
「いいえ。どういたしまして」
やや興奮しながらお礼を伝えたものの、ただハンカチを貸しただけなのに、こんなに素敵なお礼をもらっていいのかな、と考えてしまう。
でも今さらタッセルチャームを返すのもおかしいし……。
アレコレと頭を悩ませていると、母親がサバの味噌煮定食を運んできた。
「お待たせしました」
母親が部長の前に定食のトレイを置く。すると私が手にしているタッセルチャームに素早く気づいた。
「あら、その飾り、素敵じゃない。どうしたの?」
母親が『タッセルチャーム』などといったオシャレな呼び名を、もちろん知っているはずがない。けれどさすがに『飾り』というワードは恥ずかしかった。
「部長からもらったの。もういいからあっち行ってよ」
母親に投げやりな言葉をぶつける。
「はいはい。わかりました。部長さん、こんなバカ娘に素敵なプレゼントをありがとうございました」
なにも部長の前で、私をバカ呼ばわりしなくてもいいじゃない!