私の上司はご近所さん
「へえ、それは優雅だな」
「ですよね~」
私は彼氏もおらず、夏休みの予定もない。一方の佐藤さんは、彼氏と一緒にハワイに行く。
同じ職場で同じような業務に携わっているというのに、この差はいったいなんなのだろう。
「はぁ」とため息をつくと、部長が「プッ」と小さく吹き出した。
「佐藤さんがうらやましいんだろ?」
図星を突かれ、一瞬ギクリとしてしまう。けれど後輩をうらやましがっていると部長に知られるのは、少々バツが悪い。
「そ、そんなことありませんからっ!」
背筋を伸ばして速攻で反論したものの、部長はさらに小さく笑った。
「俺の前では強がらなくてもいいんだぞ?」
柔らかい笑みを浮かべた部長の口から出たのは、とてつもなく優しい言葉。まるで私のすべてを無条件で受け入れてくれると、勘違いしてしまいそうになるから困ってしまう。
「別に強がっていません」
「そうか」
「はい」
それでも意固地になってしまうのは、人をうらやましがるのは子供っぽいと思うから。私は年の離れた部長につり合うような大人の女性になりたいのだ。
そうだ。髪の毛を伸ばせば少しは大人びて見えるかも。それからもっと胸もとが開いた服を着てみるのもいいかもしれない。
部長に私を大人の女性として意識してもらう方法をいろいろと考えていると、声をかけられる。