私の上司はご近所さん
まさかのキス
店頭での焼きそば販売は、食堂の開店時間と同じく午前十一時から。その準備に向けてパックと割りばし、そして焼きそばを入れる袋などの準備を始める。
年に一度の夏祭り。浴衣を着て気分が少し上がったものの、頭はまだ鈍く痛む。けれど一家総出で準備に励む中、私ひとりが休むわけにはいかず黙々と作業を続けた。
「焼きそば、いかがですか!」
開店時間となり、大きな声をあげて道行く人に焼きそばのアピールをする。
食堂の庇(ひさし)の下にいるため、直射日光はあたらないし、店内からコードを引いて扇風機も回している。それでも湿気を含んだ空気が体にまとわりつき、額に汗が滲み出した。
暑い……。
サンサンと照りつける太陽が憎らしい。ハンカチで汗を拭っていると、こちらの様子をチラチラとうかがっている男子グループに気づいた。成長期真っ盛りの彼らを逃すわけにはいかない。
「いらっしゃいませ!」
満面の笑みを浮かべて声をかけると、彼らがゾロゾロとこちらに寄ってきた。
「ひとつください」
「ありがとうございます!」
彼らは行儀よく一列に並ぶと、ひとりひとつずつ焼きそばを買ってくれた。
ものの一分で焼きそばが八個も売れてしまい、慌てて厨房に追加オーダーを伝えに行った。