私の上司はご近所さん
白い靄(もや)がかかったように頭がぼんやりとする中、ゆっくりとまぶたを開けると見慣れた自室の様子が見えた。
あれ? 私、どうしてベッドに寝ているんだろう……。
今の自分の状況がうまく理解できずにいると、不意に声をかけられた。
「大丈夫か?」
混乱する中、声が聞こえた方に視線を移動させる。すると眉を寄せて、私を見下ろしている部長と目が合った。
「えっ?」
私の部屋に、どうして部長がいるのかわからない。ただ驚きながら部長の瞳を見つめていると、彼の口がゆっくりと動いた。
「倒れたんだ。覚えてないか?」
部長の短い説明を聞いた瞬間、今日が夏祭りだったことを思い出す。
「あっ!」
そうだ、私、焼きそばを売っていたんだ!
のんびりとベッドに横になっている場合じゃない。勢いよく上半身を起こすと、急いでベッドから立ち上がろうとした。けれどすぐさま、部長に両肩を掴まれてしまう。
「コラッ! なにをするつもりだ?」
言葉は少しきついけれど、私を叱る部長の声はとても穏やかで、倒れた私の体調を気遣ってくれているとすぐにわかった。
それでも、このままベッドで休んでいるわけにはいかない。だって夏祭りの今日は、猫の手も借りたいくらい忙しいのだから。