私の上司はご近所さん
だから飲まないって言ってるのに……。
意固地になってしまうのは、彼女がいるくせに必要以上に私を心配するから。なにかと気にかけてくれるのは、私が部下だから。ただそれだけでしょ?
部長の言動が気に入らない。ベッドの上で頬を膨らませると、部長がペットボトルに口をつけるのが見えた。
彼がスポーツドリンクを飲む理由がわからない。だって倒れたのは私で、部長じゃない。もしかして喉が渇いていたの?
部長の行動を不思議な思いで見つめていると、彼の手が私に向かって伸びてくる。
えっ? なに?
不意の出来事に驚き、咄嗟に身構えたその瞬間、部長の手が私の後頭部に回った。
「……んっ!」
部長の大きな手で押さえつけられた頭、塞がれた唇と口内に注ぎ込まれる液体、そして軽く触れ合うお互いの鼻先。
部長にスポーツドリンクを口移しされていることをようやく理解したものの、自分の意思とは関係なく喉に流れ込んでくるスポーツドリンクのせいで、すぐにムセてしまった。
「大丈夫か?」
唇を離した部長がケホケホと咳き込む私の背中をさすってくれる。
動揺する私とは違い、普段と変わらず落ち着き払っている部長を腹立たしく思った。