私の上司はご近所さん

「……んぅ」

堪え切れずに息を漏らすと、部長の唇がゆっくりと離れていく。瞳をそっと開けてみると、柔らかく微笑む部長の姿が見えた。

私、部長とキスしちゃったんだ……。

頬は火照り、唇にはまだキスの感触が残っている。

優しげな笑みを浮かべている部長をぼんやりと見つめつつ、キスの余韻に浸った。けれど、すぐにある疑問が頭に浮かぶ。

「……どうして私とキスを?」

部長の彼女は暑い中、私の代わりに焼きそば販売を手伝ってくれている。それなのに部長は、エアコンが効いた涼しい部屋の中で部下である私にキスをした。

誠実な部長が浮気をするなんて信じられなくて、彼の瞳を真っ直ぐに見つめた。

「園田さんのことが好きだからキスした」

「……!?」

えっ? 部長が私のことを好き?

耳を疑ってしまうような部長の言葉に驚き声も出ない。瞳をパチクリさせていると、部長が顔を近づけてきた。

「園田さんの気持ちが知りたい」

部長が私の耳もとで甘くささやく。

突然キスされただけでも驚いてしまったのに、予想外の告白までされてしまっては、恋愛初心者の私はキャパオーバーだ。

頬は火照り、心臓はドキドキとうるさく音を立て続けている。恥ずかしくて部長から視線を逸らすと、大きく深呼吸をした。すると少し頭が冷える。

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