私の上司はご近所さん
約二時間にわたる広報部の歓送迎会が無事に終わった。なんとなく頭がクラクラするのは、きっと飲みすぎたせいだ。
佐藤さんのペースにつられて、芋焼酎を三杯も飲んでしまったことを後悔しながら、会場である居酒屋の座敷部屋から出るためにパンプスを履いた。
けれどパンプスを履いた瞬間、ヒールが斜めになりバランスを崩す。「あっ」と思ったときには、すでに体が後方に傾いてしまっていた。
昼間も尻もちをついたばかり。もっと慎重になればよかったと、後悔しても遅い。襲ってくる衝撃を覚悟して瞳をギュッと閉じる。しかし、いつまで経っても痛みは感じなかった。
「大丈夫か?」
背中にトンとなにかがあたると同時に、低くて落ち着いた声が聞こえる。目を開けて振り返ると、部長が私の両腕を掴んで体を支えてくれていることに気がついた。
「す、すみません!」
尻もちをつかずに済んだものの、部長に寄りかかっているような体勢が恥ずかしい。部長から離れると、慌てて頭を下げた。
「芋焼酎の飲みすぎだな」
「……すみません」