私の上司はご近所さん

母親の言葉にコクリとうなずくと、食堂の引き戸をガラガラと開けて外に出た。

エアコンが効いている快適な室内とは違い、外はうだるように暑い。熱中症が原因で私が倒れたと思われるのも、仕方がないと感じた。

そんな中「焼きそばはいかがですか!」と声をあげている妹さんのもとに向かう。

「初めまして。園田百花です。今日は本当にありがとうございました」

大きな黒い瞳とスッと通った鼻立ち、そして形のいい唇。間近で見る部長の妹さんは文句なしの美人だ。

「妹の沙也加です。体調はいかがですか?」

「おかげさまでもう大丈夫です。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

沙也加さんに頭を下げて謝る。

「いいえ。困ったときは助け合うのがあたり前だから、今回のことは気にしないでくださいね」

「ありがとうございます」

二重の瞳をニコリと細めて笑うその表情は、部長そっくりだ。

「交代します。狭くて古い食堂ですけど、お昼を食べていってください」

「えっ? でも……」

沙也加さんが戸惑いながら、部長の顔を見上げる。

「折角だからご好意に甘えるか」

「うん」

部長の返事を聞きた沙也加さんの顔に、明るい笑みが浮かんだ。ふたりのやり取りを見ているだけで、兄妹仲がいいことが十分に伝わってきた。

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