私の上司はご近所さん
翔ちゃんを傷つけてしまったことが心苦しい。けれど私は部長のことが好きで、翔ちゃんの思いに応えることはできない。
自分ではどうすることもできなかったことをクヨクヨ考え、トボトボと足を進めていると、部長が私の前に突然姿を現した。
お祭りの屋台が立ち並び、賑わっている参道とは違い、この神社の裏手に人が来ることは滅多にない。
どうして部長がこんな場所に?
「部長?」
驚きの声をあげた私に気づいた部長が、こちらに向かって駆け寄ってくる。無言で近づいてきた部長の肩は激しく上下していて息も乱れていた。
「部長、どうしたんですか?」
こんなに余裕がない部長を見るのは初めてで、不安に駆られる。
「一緒に屋台を見て回ろうと思って園田さんの家に行ったら、出かけたってお母さんから聞いて……」
部長は乱れた呼吸を整えつつ、さらに話を続けた。
「園田さんを探してあちこち回っていたら、神社の先で矢野くんとバッタリ会ったんだ」
「そ、そうですか」
まさか部長と翔ちゃんが鉢合わせるなんて……。
部長の口から翔ちゃんの名前が飛び出し、ドキリと心臓が跳ね上がる。