私の上司はご近所さん
「矢野くんが園田さんなら神社の裏にいると教えてくれた。それから……園田さんを泣かせたら許さないとも言われた」
私を探し回ってくれた部長に、どうして人の気配がないこの場所で翔ちゃんと会っていたのか説明したい。けれど翔ちゃんの気持ちを無断で部長に打ち明けることはできない。
「私、翔ちゃんに自分の気持ちをきちんと伝えたんです」
「自分の気持ち?」
「はい。私は部長のことが好きだって……」
翔ちゃんの気持ちは伏せたまま、目の前にいる部長に自分の思いを伝えた。
部長へ告白するのは、これで二度目。やはり恥ずかしくて、頬が熱く火照り出す。
「矢野くんは優しくて明るくて、好青年だと思う。けれど……」
「けれど?」
言いよどむ部長に話の続きを促すと、彼の手が私に向かって伸びてくる。
「園田さんだけは譲れない」
「部長……」
部長の大きな手が私の両頬を優しく包む。そして上向きになった私の唇に部長の唇が柔らかく重なった。
翔ちゃんはライバルとも言える部長に、私の幸せを託してくれた。
ありがとう、翔ちゃん。
幼なじみである翔ちゃんの優しさに甘え、そして彼氏である部長の甘いキスを受けながら幸せを噛みしめた。