私の上司はご近所さん
「は? 結婚!?」
テーブルに両手をついた部長が、勢いよく立ち上がる。
沙也加さんの発言には、私もとても驚いた。けれど部長は、私以上に驚いたようだ。
「うん、今回東京に来たのは、お兄ちゃんに結婚の報告をするためでもあったんだ」
動揺している部長とは対照的に、沙也加さんはいたって冷静だ。
「沙也加。相手はどんなヤツなんだ?」
「西島くん。お兄ちゃんも知ってるでしょ?」
眉根を寄せて一瞬悩んだ部長が、ハッと顔を上げる。
「西島って……サッカー部の西島か?」
「うん。そう」
「沙也加! アイツとは別れたんじゃなかったのか?」
「そうたけど、やっぱりお互いのことが忘れられなくてヨリを戻したの。もう二度と別れないから安心して」
私にはサッカー部の西島くんが、どんな人物なのかさっぱりわからない。けれど頬をほんのりと桃色に染めて西島くんの話をする沙也加さんは、とてもかわいらしくて幸せに満ちあふれているように見えた。
「沙也加さん! おめでとうございます!」
お祝いの言葉を口にすると、沙也加さんがニコリと微笑む。
「ありがとう。結婚式には百花ちゃんも招待するからね」
「本当ですか! うれしいです!」
沙也加さんが着るのは、白無垢? それともウエディングドレス? 美人な沙也加さんなら、どちらを着てもすごく似合うだろうな……。