私の上司はご近所さん

歓送迎会が行われた翌日の土曜日。午後一時を十五分ほど過ぎたとき、食堂の引き戸がガラガラと音を立てて開いた。

「部長! いらっしゃいませ」

結衣に部長を紹介するという本来の目的は果たせなくなってしまった。けれど部長を招待したのは、ほかでもない自分。だから今日は全力でおもてなしをしよう。

そう心に決めていた私は、急いで部長のもとに向かった。

「こんにちは」

二重の瞳を細めて微笑みながら挨拶をする部長は、今日の晴れ渡った青空のように爽やかだ。ネイビーのVネックカーディガンを羽織ったシンプルなスタイルが、とてもよく似合っている。

昨日の『おやすみ』の挨拶も、私服姿の部長を見られるのも、ご近所さん特権。そう思うとなんだか鼻高々な気分になった。けれどそれも束の間、店内が騒がしくなっていることに気づく。振り返ると、そこには家族全員が集合していた。

今朝……。

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