私の上司はご近所さん

「うん。すごくおいしい」

「そうですか。お口に合ってよかったです」

部長の満面の笑みを見て、ホッと胸をなで下ろす。自分から誘ったくせに、ウチの食堂の料理がおいしくないと思われたら面目(めんもく)ないと、内心ヒヤヒヤしていたのだ。

「百花、店はもういいから部長さんと一緒にこれを食べなさい」

「あ、うん」

普段は食堂がひと段落した午後二時すぎに、自宅で昼食を取る。しかし今日は部長がいるから特別だ。

母親が持ってきてくれたトレイを受け取ると、部長の向かいの席に腰を下ろす。そしてエプロンを外すと「いただきます」と両手を合わせた。

メニューは部長と同じサバの味噌煮定食。白いご飯と甘辛の味噌ダレがよく合う一品だ。

「部長さん、よかったらこちらもどうぞ」

「ありがとうございます」

母親が鶏のから揚げがのったお皿をテーブルの上に置く。こんなの注文していないのに、さては……。

「あの、百花はきちんと仕事をしているでしょうか?」

母親の企みにハッと気づいたのは、部長に聞いてほしくないことを母親が尋ねてしまった後。

ヤラれた! そう思ってもすでに時遅し……。

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