私の上司はご近所さん
Story・5
部長とチョコレート工場
歓送迎会が終わった翌週の月曜日。朝のミーティングが終わると自分のデスクに戻り、業務に励む。
星出版さんの工場取材日も決まり、今、私は夏ショコラの発売PR活動の準備に追われている。
夏季限定商品の夏ショコラの発売日は六月一日。その日は直営店で発売イベントが開催されることも決まっている。
テレビやラジオ、新聞と雑誌といったメディアに、夏ショコラが発売されることをたくさん取り上げてもらいたい。
その思いを胸に、先週から進めていたメディアに通知するプレスリリースの下書き作業に取りかかった。
パソコンと向き合うこと二時間、ようやく下書きが完成する。主任と部長にチェックをしてもらうために原稿を提出すると、次の作業を始めた。
ああ、忙しいな……。
デスクの上に積み重なった書類の山を見てため息をつくと、オフィスに部長の声が響いた。
「園田さん」
「はい」
返事をすると部長のデスクに向かう。
「これ、やり直し」
低く短い声で指示を出した部長が、私にファイルを差し出してくる。
「は、はい。わかりました」
近寄りがたい雰囲気を醸し出す部長を前に、緊張しながらファイルを受け取った。