私の上司はご近所さん

部長はみなとみらいの夜景をスマホに収め始める。夢中でシャッターを切る部長の姿をボーと見つめること数秒、トントンと肩を叩かれた。我に返った私が振り向くと、そこには見知らぬ人の姿があった。

「Are you alone?」

青い瞳と美しい金髪の持ち主である外国人の彼に、なにを聞かれたのかわからない。

「えっと……ワ、ワンスモアプリーズ」

もしかしたら彼は道に迷って困っているのかもしれないし、お財布を失くしてしまったのかもしれない。少しでも彼の力になりたくて、たどたどしく聞き返す。すると外国人の彼はニコニコしながら、私の肩に腕を回してきた。

えっ? なに?

突然の出来事に驚き、声も出せない。

外国の人って挨拶でキスしちゃうし、このスキンシップもその類のものなの?

どう対処したらいいのかわからずに困り果てていると、背後から声が聞こえてきた。

「Get your hands off!」

ここは日本だというのに、英語が飛び交う状況に戸惑いながら振り返る。

「部長!?」

部長って英語が話せるんだ!

初めて知った事実に驚いていると、肩に回っていた腕がスッと離れていった。

私ひとりでは、困っている外国人の彼を助けてあげることはできない。でも英語が話せる部長がいてくれればもう安心だ。

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