私の上司はご近所さん
翔ちゃんにフラれた過去を上司である部長に打ち明けてしまったのは、飲み慣れないワインのせいと、ナンパというハプニングに見舞われて気が動転しているせいだ。
普段よりも思考が鈍っていることを痛感しながら、ベンチに腰かけている部長の隣にチョコンと座る。
「翔ちゃんに、もう一度告白してみたらどうだ?」
もう、恋バナは終わりだと思っていたのに、あり得ないことを言い出す部長に驚いてしまった。
「同じ人に二度もフラれるのは嫌です」
苦しくて悲しい思いをするのは、一度きりで十分だ。それなのに部長は耳を疑ってしまうようなことを続けて言う。
「俺は脈アリだと思うけどな」
上司と恋愛話って、どうなの?
違和感を覚えつつも、男性である部長の意見を聞いてみたい気持ちを押さえることができない。
「どうしてそう思うんですか?」
「園田さんのことを見る翔ちゃんの目が、好きだって訴えているからだ」
目が訴えているって……。
部長のロマンティックな発言を聞き、あわや吹き出しそうになるのを必死に堪えた。
「部長! 変なこと言って私をからかわないでください」
「別にからかっていないさ。俺は部下である園田さんに幸せになってほしいと思っているだけだ」
瞳を細めた部長に、頭をポンポンと撫でられる。
職場では厳しいけれど、仕事を離れると途端に優しくなるんだから……。
今日のところは、近所のお兄さんに恋愛相談にのってもらったと思うことにした。