私の上司はご近所さん
言葉は素気ないけれど、素早くフォローしてくれた部長はやはり頼りがいがある。
「昨日、直営店で生チョコを買ったらしいんだ。けれど冷蔵庫に入れなかったらしい」
部長はお客様の名前と住所を書いたメモをトンと指し示す。
生クリームと洋酒を練り込んだ生チョコレートは溶けやすいため、十度以下で保存しなくてはならない要冷蔵商品だ。
「それなら、こちらにはなんの落ち度もないじゃないですか。新しい商品を届ける義務はないし、もし相手がクレーマーだったらまた同じことが起きますよ」
今まで黙っていた主任が声をあげた。
直営店とショップでは商品をお買い上げいただいたお客様に、賞味期限と保存方法の説明をするしラベルも貼る。
主任の言う通り、お客様が取り扱いを誤った商品まで責任を負うことないと私も思った。
「まあ、声を聞けば大抵のことは把握できる。悪質なクレーマーはこちらの話を聞かずに一方的に早口でまくし立てるからな。それに白石さんが住んでいる場所は田園調布。お年寄りだし、まずクレーマーということはないな」