私の上司はご近所さん
「それなら連休の最終日、俺とどっか行かないか?」
矢野ベーカリーの定休日は月曜日。ゴールデンウイーク最終日とちょうど重なる。
「うん、行く!」
速攻で返事をすると、翔ちゃんが大笑いした。
「アハハ、百花って本当に単純だな」
「もう、からかわないでよ」
思いがけずゴールデンウイークの予定が増えたことがうれしくて、ついはしゃいでしまった。子供っぽい様子を翔ちゃんに見られて恥ずかしい。それでも一度高ぶった感情は抑えられなかった。
「ねえ、翔ちゃん。どこに行く?」
ハイテンションになりつつ行く先を尋ねると、テーブルに頬杖をついた翔ちゃんがクククッと笑う。
「百花が行きたいところに連れて行ってやるよ」
「本当に?」
「ああ」
温泉にのんびり浸かって日頃の疲れを癒すものいいし、遊園地ではしゃぐのも楽しそう。
「どうしようかな……」
行き場所をひとつに絞り込めず頭を悩ませていると、翔ちゃんがオーダーしたカツカレーが出来上がった。食欲をそそるカレーの匂いを嗅いだら、おいしいものを食べに行くのもいいかもしれないと思ってしまう。
結局、翔ちゃんがカツカレーを食べ終わるまで行く先を決めることができず、後日改めて連絡するという約束を翔ちゃんと交わしたのだった。