私の上司はご近所さん

「いただきます」

手を合わせて挨拶をすると、ふたりで勢いよくカツカレーを食べ始める。そんな私の耳に聞こえてきたのは、クスクスという笑い声。顔を上げると肩を揺らして笑っている部長と目が合った。

カツカレーを豪快に食べている色気のない姿を見られるなんて、恥ずかしい。コホンと咳払いをしてお水をひと口飲むと、なに食わぬ顔をしてみた。

「部長、札幌は楽しかったですか?」

「ああ。リフレッシュできた」

「そうですか」

カツカレーのことをツッコまれずに済んでホッとしたのも束の間、部長が札幌でどのようなゴールデンウイークを過ごしたのか気になってしまう。

彼女とは毎日会ったの? ふたりでどこに行ったの?

自分でも何故このようなことが気になってしまうのかわからない。お腹が空いていたはずなのに、カツカレーの続きを食べる気になれずにいると、部長がイスから立ち上がった。

「ごちそうさまでした。おいしかったです」

「こちらこそ今日はありがとうございました」

部長が母親と会話を交わしながら会計をしていると、厨房から父親が姿を現す。

「部長さん、お土産ありがとうございます。またお待ちしております!」

「はい。また来ます。ごちそうさまでした」

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