私の上司はご近所さん

翔ちゃんと別れて自宅に戻った私が向かったのはお風呂。一日の疲れと汗を洗い流してサッパリすると、キッチンでミネラルウォーターを飲む。

今日はいろいろとあったな……。

「ふう」とひと息ついて一日の出来事を思い出していると、食堂の閉店作業を終わらせたお兄ちゃんが姿を現した。

「百花。翔太とのデートは楽しかったか?」

お兄ちゃんはニヤニヤと不気味な笑みを浮べると、コップにミネラルウォーターを注いで一気に飲み干す。

「だから、デートじゃないからっ!」

「別に恥ずかしがることないだろ」

私は翔ちゃんとデートしたとは思っていないし、恥ずかしがってなどいない。

「もう、しつこいな。それよりお兄ちゃんこそ、美帆さんに早くプロポーズしたら?」

これ以上からかわれたくなかった私は、お兄ちゃんの彼女の話題を持ち出した。

美帆さんとは学生時代からつき合っているお兄ちゃんの彼女の名前。年はお兄ちゃんと同じ二十九歳。美帆さんとは数回会ったことがあるけれど、童顔でとてもかわいらしい女性だ。

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