私の上司はご近所さん
恥ずかしくて口にはしないけれど、世界にたったひとりしかいないお兄ちゃんには絶対に幸せになってもらいたい。
「大丈夫だよ。美帆さんはきっとお兄ちゃんからのプロポーズを待っているって!」
お兄ちゃんを元気づけるために、わざと大きな声で言ってみせた。
「そうだといいけどな。もし美帆にフラれたら、百花、慰めてくれるか?」
中学時代からバイクを乗り回して両親を心配させていたヤンチャなお兄ちゃんが、美帆さんのことになると弱気になるからおもしろい。
「うん、いいよ。朝までヤケ酒する?」
「アハハ、そうだな。百花、話聞いてくれてサンキュな」
「うん」
お兄ちゃんは私の肩を軽く叩くとキッチンから出て行った。
彼氏がいない私にとって、プロポーズとか結婚は未知なる世界だし、一生添い遂げたいと思える人に出会えるなんて奇跡としか思えない。
部長は彼女と結婚するつもりなのかな……。
ひとりになったキッチンで思い浮かんだのは部長のこと。お兄ちゃんと部長の話などしていない。それなのにどうして部長のことが気になったのだろう……。
自分の不可解な思考に首を傾げた。