私の上司はご近所さん
終わらせたい仕事はまだ山のように残っている。けれど、このまま残業を続けていたらきっと夜が明けてしまう。
仕方ない。今日はここまでにしよう。
キリのいいところで業務を終了させると、パソコンの電源をオフにした。
「終わったのか?」
書類から視線を上げた部長に聞かれる。
「はい。終わりました」
「それなら一緒に帰ろう」
「はい」
仕事が終わるまで待って一緒に帰る。まるでオフィスラブを疑似体験しているようなシチュエーションに胸が弾む。けれど私と部長はご近所さん。一緒に帰ることに深い意味はない。
素早く後片づけを終わらせた部長とともに、広報部を後にした。
「部長、今日は会議が終わったら直帰でしたよね?」
エレベーターに乗り込むと、広報部に戻って来た理由を部長に尋ねる。
「まあな。広報部に戻ったのは書類の確認をしたかったんだ」
「そうですか」
直帰できないほど忙しいなんて部長も大変だと思っていると、エレベーターが一階に到着した。エントランスホールを横切り、裏口から外に出ると、部長がすぐに車道側に移動する。さりげない気配りをしてくれる部長の優しさをうれしく思いながら駅に向かった。
「それで行くのか?」
夜道に部長の声が響き渡る。けれど彼が私になにを聞きたいのかがわからない。
「はい?」
「同期から合コンに誘われていたよな?」