私の上司はご近所さん
まさか結衣との会話を部長に聞かれていたとは!
残業中に雑談していたことを注意されるのではないかと思い、ヒヤヒヤしつつ部長の顔を見上げた。けれど、彼はクスッと小さく笑うだけ。その様子だと、私を咎(とが)めるつもりはないみたいだ。ホッと胸をなで下ろす。
「今は夏ショコラのイベントのことで頭がいっぱいですから、合コンには行きません」
結衣には家に帰ったら連絡をして、きちんと断るつもりでいる。
「そうか。それを聞いて安心した」
「……?」
「合コンで芋焼酎を飲んで、尻もちをついたら危ないからな」
部長は私を見ながら、意味ありげに含み笑いした。
『芋焼酎』という単語を聞いて思い出すのは、四月の歓送迎会での出来事。芋焼酎を飲みすぎて、フラついてしまったところを部長に助けてもらった記憶がよみがえる。
一ケ月以上前の出来事を持ち出して、私をからかう部長は意地悪だ。
「あれは……」
すぐさまフラついた言い訳をしようとした私の瞳に、優しげに微笑む部長の姿が映り込む。
私を冷やかしておもしろがっていた部長とのギャップに戸惑ってしまい、なにも言えなくなってしまった。