私の上司はご近所さん
「乾杯!」
ビールが注がれたグラスをカチンと合わせると、合コンがスタートする。ダイニングバーの個室のテーブルの向こう側には、スーツ姿のイケメンが四人。隣の結衣の口もとは終始、緩みっぱなしだ。
それぞれの自己紹介が終わると、待ちに待った食事タイム。今日の私の目的は、彼氏を見つけることではない。お腹いっぱいになるまで食べるつもりでいる私は、早速料理に手を伸ばした。
「園田さん?」
「はい?」
「次はなに飲む?」
空になった私のグラスに気づいて声をかけてくれたのは、医者の芳川さん。メタルフレームの眼鏡がとても似合っている。
「そうですね。それじゃあ、カシスオレンジをお願いします」
「了解」
芳川さんはにこやかに微笑むと、店員さんを呼び出して追加オーダーをした。
「広報部の仕事って大変そうだね」
私が自己紹介したときに言った職業を覚えてくれて、話しやすい話題を振ってくれた芳川さんの気遣いがうれしい。
「いえ、お医者様に比べたら、私の仕事なんてちっとも大変じゃないです」
「そんなことないよ」
芳川さんと会話をしていると、オーダーしたドリンクが運ばれてきた。
「じゃあ、園田さん。改めて乾杯しましょうか」
「はい」
お互いのグラスをカチンと合わせる。
「今日の合コンに参加して正解だな」
「正解?」
「そう。かわいらしい園田さんと出会えたからね」
「そ、そんな……」