私の上司はご近所さん

さつき台駅で電車を降りると自動改札機を抜ける。

人数合わせのために合コンに参加したものの、開始早々に抜け出してしまった。結衣に迷惑をかけてしまったのではないかと、気になって仕方ない。

結衣に謝らなくちゃ……。

「はぁ」とため息をつきつつ、駅前通りを進む。時刻は午後八時。まだ営業している店舗が多い駅前通りは照明が輝き、たくさんの人が往来している。しかしそこを通り過ぎると辺りは薄暗く、人の姿もなくなった。

あれ? この通りってこんなに暗かったっけ?

ここ最近は部長と一緒に帰っていたせいで、今まで気にも留めなかったことが新たに気になってしまった。

なんとなく心細くなり、バッグを胸の前に抱えると小走りで家に向かった。しばらくすると、さつき通り商店街のアーケードが見えてくる。

あと少しで家に着く。ホッと胸をなで下ろしていると、見覚えのない人物が私の前に急に立ちはだかった。音も立てずに突然姿を現した人物は、もうすぐ六月になるというのにブラウン色のトレンチコートを着ている。

なんだろ、このオジさん……。

私に向き合い、不気味な笑みを浮かべている人物が怖い。

とにかく無視して家に急ごう。そう思った瞬間、オジさんのトレンチコートが全開になった。

目に飛び込んできたのは、オジさんの全裸。もちろん男性にしかついていないモノも丸見えだ。

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