もしも、運命の赤い糸がみえたなら
「あれ?栞菜ちゃん、まだいたの?」
聞き覚えのある声がすると思ったら。
汚れたユニフォーム姿の森くんだった。
「森くん、試合、お疲れ様。今日、ヒット打ったんでしょ?すごいね」
あたしは幸華ちゃんから聞いた情報を言う。
「え?なんで知ってるの?」
「幸華ちゃんに聞いたの。すごいね。試合に出て、活躍して」
「いやいや、たまたま。代打で出させてもらって」
「それで打てるからすごいよ。いっぱい練習したんでしょう?」
「そんなのみんな一緒だって。そういえば、栞菜ちゃんは何してたの?」
「あたしは、山脇先生からの特別課題を少し」
あたしはプリント集を隠し、森くんから視線を外した。
「俺でよかったら、教えようか?」
「ううん。山脇先生が補習の時に教えてくれるみたいだから大丈夫。」
森くんの申し出を断ってしまった。
「そっか。わかんないのあったら聞いて。教えられるのは教えるし。」
森くんの笑顔はいつだって優しい。
「そろそろ帰ろか。外、だいぶ暗いよ。」
その言葉に窓の外を見ると、だいぶ暗くなっていた。
あたしはやっぱり頷いて、森くんの後姿を追いかけた。