無視は無しで【短編】
それは、5限目が終わった後の休み時間。
学内で一番の美女の隣に、私は当たり前の様にして、楽しくお喋りをしていた。
場所は廊下。
歩きながらのことである。
現在、私たちは高校2年生。
彼女とは、中学2年からの仲で、もう4年も行動を共にしているのだ。
トイレに行くのも、移動教室へ行くのも当然、教室では常に一緒にいる。
一人では、もうやっていけないくらい。
あ、でも帰る時だけは、分かれてしまう。
彼女は自転車で、私はバスだからだ。
話を戻して、今は5限目終わりの休み時間。
2人で理科室へと、移動している最中でのことだった。
先程も言った通り、彼女と談笑していた。
すると、いつも通り、廊下にいる人たちが振り返る。
みんな、彼女を見ては男女構わず、噂をしている。
かわいい、かわいいと口々に聞こえてくる。
この通り、彼女は自慢の親友なのだ。
そんな時、トイレから出てきた人がいた。
同じ部活の田中先輩だ。
とても親しくしてくださり、私にとって、兄の様な存在の人でもあるのだ。
棟も違う上に、私たちがここを通るのは、この時間を含めた週に2、3度程度だ。
そもそも先輩が毎回、同じ時間、タイミングでもよおすはずなどないので、ここで私たちが出くわすことは、今回が初めてだった。
不意に先輩と目が合う。
思わず、嬉しくなって挨拶をしようとしたが、それをやめた。
田中先輩の目線は、すぐに自慢の親友を捕らえていたから。