PMに恋したら
その光景に胸騒ぎを覚える。この事故現場は早峰フーズから歩いて数分の距離だった。
病院に到着したことを母に連絡すると入り口まで迎えに来てくれた。
「どういうこと? 何があったの?」
病室まで案内されながら母に詰め寄った。
「お父さん、横断歩道を渡るときに信号無視してきた車に撥ねられたそうなの……」
「え!?」
衝撃的な説明に一気に怒りが湧きあがる。
「まさかひき逃げ?」
「ううん、車の運転手もお父さんを撥ねて電柱に衝突して……。その人は別の病院に行ったから状態はわからないんだけど、警察の方の話によるとスマホを見ながら運転してたんじゃないかって」
「なにそれ……」
運転中によそ見して人にぶつかるなんて呆れてしまう。
やはり来る前にタクシーの中から見た場所が事故現場だった。
「それでお父さんは?」
「ここよ」
母が指した病室に入ると、既に処置は終わっているのかベッドの上で父は眠っていた。個室の真っ白な部屋の中央で体にチューブを付けられた父は顔にもガーゼが当てられている。
「命に別状はないらしいの。でも自力で歩くことは難しいかもって」
「え?」
「片足の状態は良くないって……この先ずっと車椅子での生活になるかも……」
ショックで言葉が出なかった。父が自分の足で歩くことができなくなる。突然突きつけられた現実は重かった。
「リハビリとかすれば治るんじゃ?」
「多少足の感覚は戻るらしいの。でも完全に自分の足だけで歩くのは難しいって……杖を使うか車椅子での生活だって」
「そんな……」
それは父だけでなく、母や私の生活も変えてしまう事態だ。