PMに恋したら
スカートに伝線したストッキングとグレーのぶかぶかな靴下を履いた姿は駅前では目立った。それでも私の足取りは軽かった。
シバケンに会えた。それは私にとっては大きなことだ。彼は今でも警察官で、私の憧れた通りかっこいい警察官でいてくれた。嬉しくて太一への怒りなど吹き飛んでしまった。
もっと話をしたかった。私のことを覚えていますかと問いたかった。けれど恥ずかしいところを見られて再会を喜べる気分ではない。もっと違う形で挨拶がしたい。
私はシバケンが好きだ。
改めて気持ちを確認する。あのときは叶わない初恋だった。けれど今私は高校生じゃない。大人になったのだ。シバケンとの距離を縮めることはずっと簡単なはず。
家に帰ると早速シバケンの靴下を洗濯した。少量で洗濯機を回すことに母はいい顔はしなかったけれど、何を言われようとこればかりは譲らない。洗った靴下を洗濯バサミが付いたハンガーに吊るし、自分の部屋のフックにかけて衣類乾燥機のスイッチを入れた。
次の日の朝いつもより早く起きると、まだ少し湿っている靴下にドライヤーの温風を当てた。完全に乾くとそれをキャラクターが大きくプリントされたテーマパークの袋に入れカバンに入れた。
始発が動き出す頃に家を出て太一の家に向かった。部屋のチャイムをやや乱暴に押して寝ぼけ顔の太一が顔を出すと、私はことさら不機嫌な顔をして睨みつけた。昨夜されたことを忘れたわけじゃない。恋人だからといって裸足で追い出すなんて酷すぎる。
「実弥ごめん!」
太一は私の顔を見て一気に目が覚めたのか深く頭を下げて私に謝罪した。
「俺はほんとに酷いことした!」
「…………」
太一は心から謝っている。反省しているのだと感じることができた。けれど素直に許すことができないほどにはまだ怒っていた。
「カバン返して」