棘を包む優しい君に
4.本性を暴くために
「坊っちゃん?
 まさか、姿を見られたのですか?」

 まだ素直に開いてくれないまぶたを持ち上げると心配そうな顔があった。

 爺。本当の名前は知らない。
 小さい頃から健吾の世話焼きで物心ついた時から爺だった。

「いや。誤魔化した。」

 眠い目をこすると自分をすくい上げ目線を合わせた朱莉が脳裏に浮かんだ。
 純粋そうな澄んだ瞳に映る針だらけのハリネズミ。

 無様だと思うのに、自分が映っているその瞳は美しかった。

「誤魔化した……ですか。
 大丈夫でしょうか。
 いえ、番いになるのでしたらいいんです。
 いつかは告げないといけないことですし。」

「番い、番い、うるさい。
 ……そうだな。
 本性を知るのにいいかもしれない。
 ハリネズミ姿の俺の世話をさせる。」

「……気は確かですか?」

 爺は眉をひそめたが、正気に決まっている。
 ごちゃごちゃ小言を言う爺に酒を買ってこさせ朱莉にメールを送った。

『ちょうど今日は仕事で忙しい。
 寮に来てハリネズミの世話をしてくれ。』

「よし。あの女が入って来れるようにしてやってくれ。」

「しかし坊っちゃん……。」

「番いにしたいんだろ?
 だったらハリネズミに怖気付くような奴じゃダメだからな。」

 楽しそうに笑う健吾に「普通に世話をさせるつもりがないから心配なんです」と爺は聞かれないように呟いた。



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