棘を包む優しい君に
　朝陽が当たって、起きたくない体を動かした。
　ベッドで眠った覚えはないのに、ベッドで寝ていた。

　今日は大事な会議があるのに部屋を片付けてから行くのか………。

　部屋の様子に気づいて眠かった頭が一気に覚醒した。

　まず部屋が綺麗なことに呆然とした。
　誰が触ったんだと部屋を見回して、やっと自分がハリネズミの姿になっていることに気がついた。

　その後にベッドの奥に朱莉が寝ていることに気づいた。

　いつ……いつ来たんだ。

　時計を見れば８時過ぎを指している。

　まずい。早く人間にならなくては……。

　ハリネズミの時用に置いてある鏡の前に行き、目と目を合わせた。

　おかしい……。人間に戻らない。

　何度やっても同じだった。

　どうして……どうして……どうして……。

　ハッと気づいて朱莉の元に舞い戻った。
　頬をハリネズミの足で押して起こす。

　こんなにも早く真実の愛とやらが無くなって一生ハリネズミのままなのか……。



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