棘を包む優しい君に
12.真実の愛と番い
 健吾さんは自分が気づいていないだけで、みんなに慕われて尊敬もされていた。
 前に会社で健吾さんを待っていた時。

「あれ。もしかしてこの子……。」

 何人かのモデルみたいな人達に声をかけられた。
 いくらかっこよくても私には健吾さんが一番だと、知らんぷりしているとその人達が健吾さんの話を始めた。

「あなた健吾さんの大切な人でしょ?」

 え?と顔をあげると、みんな興味津々な顔をしていた。

「健吾さんの……?
 残念ですけど、私が一方的にお慕いしてるだけです。」

 健吾さんからは大切だなんて言われたことはないし、どちらかと言えば疎まれてる。

 改めて健吾さんとの関係性を考えると心が沈みそうだった。

「健吾さん、あんなにかっこいいのに中身は捻くれてるからな。」

「そうそう。俺たち、すげー慕ってるのに、俺、動物がチーターなんだけど、そのせいか素っ気ないんだ。」

「そりゃハリネズミにコンプレックスあるからだろ?」

 ハハハッと笑っている人達はハリネズミにコンプレックスがあることがおかしいようだった。

「人外なら人としての大きさが大切なのにな。」

「本当、本当。」

 人としての………。
 なんとなく分かる気がする。

「俺は急に今の姿になったところを健吾さんに助けられたんだ。
 パニックで怪我をさせちゃったのに、大丈夫だって。」

「ここにいる奴は大抵が同じようなもんで、社長か健吾さんに恩がある奴ばっかりなんだ。」

 そっか。
 健吾さんはこんなにもみんなに慕われてるのにきっと気づいてない。

「あなたならきっと大丈夫だよ。」

 散々話していた人達は朱莉のもとをを去っていく。

「え、待って。
 どうして私なら大丈夫なの?」

「だって健吾さんを人に変えられたんでしょ?
 それを信じて!」

 健吾さんを人に………。

「今まで誰も出来なかったって言えば分かるかな?
 捻くれ王子を俺たちからも頼んだよ!」

 明るい笑顔を向ける人達は今度こそ行ってしまった。

 私だけが健吾さんを人に………。
 私だけ……。

 だったら私は健吾さんの側に居なくちゃ。





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