棘を包む優しい君に
 健吾は決意すると爺に電話をした。

「あいつがどこにいるのか知ってるか?
 知ってるよな。オヤジに全部聞いたから。
 ……会いたいんだ。」

「そういうことはご本人にお伝えください。
 爺が赤面してしまいます。」

 場違いな爺の返答にこちらの顔が熱くなる。

「こっちだって必死の思いで電話してるんだ気持ちを汲んでくれよ!!」

「朱莉様はご自分のアパートに戻られてから一歩も外に出ていません。」

 朱莉が狙われると知っていてずっと監視していてくれたのだ。
 いつもいつも爺が覗いてるとばかり……。

「……今からは俺が守るから。」

 言葉にすると脆く崩れそうな恥ずかしい台詞も言葉にするからこそ自分に言い聞かせれる気がした。

 俺が守るんだ。俺が。


 朱莉のアパートを爺に聞いて、教えてもらった部屋の前に来た。
 たぶん今もどこかで爺が見張っているのだろう。

 それでも、分かっていても、俺はあいつに俺から話さなくちゃいけない。

 喉をゴクリと鳴らしてからインターフォンを押した。

 しばらくして中からごそごそ動いた音がして、インターフォンから声がした。

「え?副社長ですか?
 え、ど、どうしました?
 あ、すみません!今、開けます!!」

 ドタバタと派手な音がして、ドアが開いた。
 その先にいた朱莉を見て目眩がして、目をそらした。

 口に手を当ててもごもごと文句を言う。

「馬鹿。お前。
 もっとなんか着てから来い。」

 顔が熱くなるのは陽射しが強いせいだ!
 くそ!西日がやけに当たる玄関だな。

 指摘した朱莉からは「え?あ、きゃ!すみません!」と声がしてドアが乱暴にしまった。

 朱莉はキャミソール1枚だけと短いショートパンツ姿。
 キャミソールは肩から紐が落ちていて…。

 あぁクソ!
 何を回想してるんだ!

 もう一度開いたドアから赤い顔が覗いて「どうぞ」と声をかけた。
 今度は薄手のパーカーを羽織り、長めのスカートらしきものを着ていた。

「お前、あんな姿で宅配とか出るなよ。」

「え?なんですか?」

 小さなこぼれた本音は聞こえなかったようで「いや。何も……」と言葉を濁すことになった。





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