棘を包む優しい君に
16.言われたくなかった
 怒った朱莉は口も聞いてくれなくなって爺と出て行った。
 仕事に行けばいるのだろうが、なんとなく気に入らない。

 寮に一旦戻るとまた爺から電話があった。

「朱莉様とはご一緒ですか?」

「は?何が?」

 嫌な予感が心の中に黒い点を落としたように広がっていく。

「おかしいと思いましたのに。
 申し訳ありません。
 あぁ。お詫びして済む話では……。」

「爺!いいから!
 とにかくどこで朱莉と別れたのかと、オヤジにも連絡しろ!」

 部屋の奥にある引き出しから銃を取り出して鞄にしまった。

 麻酔銃。

 急に人外になって驚いて暴れる奴を眠らせるためのもの。
 それを……朱莉を助けられるのならなんだっていい。







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