契約の彼女と彼の事情

17話

「1件紹介できる所あるよ」

場所を聞くと、職場に今より近い。

「家賃は1万でいいよ、敷金、礼金もいらないし」

「家賃、1万?」

「実は、入る人がいなくて、困っている物件なんだ、
そのかわり、文句はなしだよ」

自殺者が出たとか?と聞くと、いわくはないよと言われた。

それだけ言って、詳しくは教えてくれない。

少し迷ったが、修一郎さんが、ひどい物件を紹介するとは思わない、
それに、もう少しの間だけなのだ、多少の事なら我慢できる。

「それじゃお願いしちゃおうかな」

「分かった、いつがいい?」

「アパートの契約がもうすぐなの、早い方がいいわ」

「ならさっそくだけど、明日でもいい?」

本来契約では、土曜日だけ会う契約だが、
私事で手を煩わせるのだ、不満はない。

「そんな早くて大丈夫なの?」

「入る人がいないって言っていたでしょう?空き家なんだよ」

「それじゃお願いします」

こうして、私の引っ越しが決まった。
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