契約の彼女と彼の事情

27話

「こうゆうの、”人魚姫の恋”って言うんです」

「人魚姫の恋?」

こくりとうなずく。

自分がどうして、こんな事を言い出したか、
自分では分かっていた。

本来なら、300万貯まりました、ありがとうございます、
と言って、契約の彼女を辞めて、バロセロナへ行けばいい。

修一郎さんも、そう思っている、
なのに、その一言が言えない。

いくら、茶道や華道を練習しても、
着物がたためるようになっても、

しょせん、私は私なのだ、

修一郎さんとの差が埋まる訳ではない、

学校での成績はずっと中ぐらいだった、
仕事では、大学を卒業した社員が、私を追い抜いていく、

これからも、ずっと下っ端OLなのだろう、

だから、修一郎さんから、私を見限ってくれたらいい、
そうすれば、あきらめられるから、

こんな卑怯な事を考えるぐらい、私はいくじなしだ。
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