私はそんなに可哀想ですか?
「私も好きだった、高校に入って御手洗君の事を知ってからずっと」

同じものを、と言って浅田はグラスを店員に差し出す。手持ち無沙汰を紛らわす様に左手の薬指に光る指輪をクルクルと回している。

「御手洗君は?」

「俺が何?」

「好きな子、居なかったの?」

酒の席、遥か昔の話、もう時効は成立してるだろう。

「居たよ、高校3年間ずっと好きだった子が、その子は知らなかったけどな」

「へー、意外だな、御手洗君ってそうゆうの興味ないと思ってた。クラスの子?」

「さっき言っただろ、クラスの男子の半分ぐらいは浅田が好きだったって」

「嘘、私?」

浅田は呆気に取られた顔を俺に向けた。ああ、そう言えばこの顔よくしてたな。脳裏に高校の時の浅田が蘇り、呆気に取られた顔をしている。

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