私はそんなに可哀想ですか?
ちょうどその時だった。十字路の右手の坂の上から自転車が勢いよく下って来るのが目に入った。

俺は自転車をやり過ごそうと歩みを止めるが女の子はそのまま十字路に差し掛かる。

反射的に俺は手を伸ばして女の子の腕を引っ張って引き寄せた。

「きゃっ!」

女の子が叫ぶと同時に、自転車はたった今彼女が居た場所を駆け抜けて行った。

「何やってんだ!」

思いの外大きな声に自分が驚く。

「大丈夫か?」

一つ大きく息を吐いてから、呆然とする彼女に俺は出来るだけ穏やかに尋ねた。

少し間があって女の子は小さく頷いた。


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